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はじめに
「日本はどんな社会問題を解決するのか」研究会は、野村のTwitter上の声かけで集まってくださった20名の有志が、一度集まって対話をしよう、というゆるーい会です。
日本が取り組むべき社会問題、という大きな問題だからこそ、この会に求められるアウトプットはありません。ですが、アウトプットがないということは重要ではないということではなく、アウトプットを求める会議が世の中を悪い方向へどんどん押しやっているのではないか、という疑問から敢えてゆるい、ゆるーい、ゆるーーい対話へと意識的に進んでいる挑戦だとご理解ください。
では、対話に耳を澄ましてみましょう。10月13日の夕方5時に、国際大学GLOCOMに集まり、約束の8時を過ぎても話の止まらなかった対話に。
――すべての社会問題をドミノ式に解決するならば、教育、人が大事ということになるのか?
企業研修は、やればやるほど虚しくなる。
個人として魅力的な人でも、組織としては制約ばかり。ロスが多い。
日本人は体力がなさすぎる。心身が健康であることが大事。
大企業の中に入ってしまうと、自分が本当に社会に役立っているのか、収益に貢献しているのか、実感がわかなくなってしまう。
疲れたサラリーマン。そのような姿を見せること自体、子供の教育に悪い。
つまり、教育と人が大事ということに誰も異論はないが、現実に教育はうまくいっていないのが現状だ。
――なぜ、仕事を義務感だと感じてしまうのか?
使命感は忘れやすい。嫌なことをさせられていると、義務感になりやすい。
だが、つねに使命感と義務感(責任感)は表裏一体、混ざっているもの。
自分自身の経験だが、2日徹夜して5時間寝て、また2日徹夜して、を2ヶ月間続けて、倒れた。このときは、自分の中には義務感しかなかった。先輩は心が壊れて、自分は心は壊れなかったが身体が壊れた。そこまで行って、これはおかしい、と思った。身体が治って経営企画に移ったあと、後輩に同じことをさせないようにしないと、という責任感が沸いてきた。
NPOを1年前に立ち上げた。最初は使命感で立ち上がったが、1年経って、義務感が出てきた。1年の間に奇跡がたくさん起きた。気持ちのいい、「やらねばならない」が生まれてきた。
コンサルタントになる前、メーカーにいた。現場がみんな疲れていた。風土改革が必要と思い、プロセスデザインをする仕事に就いた。「対話する」ということ自体が大事だと痛感している。
――社会問題は、本当に問題なのか?
ある程度の(1)心身の健康、(2)ベースとなる豊かさ、(3)社会性、の三つのバランスがとれていれば、問題は自然に解決されていくのではないか。あるいは、解決しようとする人や勢力が現れてくるのではないか。社会問題が放置されたままになっているということは、この国の三つのバランスがどこか崩れてしまっているのではないか。
ベースのバランスが崩れると、それが問題だ、問題だと感じてしまう。バランスがとれてくると、問題が問題でなくなる方向に進む。立つべき人が立ち上がるようになる。
つまり、「社会問題を問題でなくしてしまう」ためのプラットフォームが必要。
――じっくりと対話することが、今なぜ大事なのか?
じっくりと対話することが必要、と社内中の部門長に話していてる。しかし、「対話は何で必要なの?」「100人が2時間対話したら、その工数分のお金をどうやってペイするのか?」と言われてしまう。そこで、「仲が悪いと、アポ取りに苦労する。苦労して調整して、2週間後に15分の打合せの約束をもらう。そうすると、15分で伝えられるように資料づくりを始める。こんなことが、あちこちで起きている。もし仲が良かったら、ちょっと会いに行って30分で終わることなのに。だから、対話をしましょう。仲良くなるために」と言って、説得している。
――対話の場さえ作ればいいのか?
日本の「寄り合い」がなくなっていったのにも、理由があるのではないか。単に「対話をする場を作ろう」というだけでは、前に進めないのではないだろうか。
世代によって、考え方の前提が違う。例えば自分の会社は、平均80歳代の創業経営者が「厳しさを追求する文化」を作ろうとする。お互い、違いを前提として対話ができなければ、単なる押しつけになってしまう。
オランダでは、古い考えを大人が持ち込まないように、学校を社会から分離する、という考え方がある。新しい発想で人を育てていくためには、学校の中に純粋な共同体を作る必要があるという考え。
――そもそも「豊かさ」とは何か?
豊かさとは何か、というコンセンサスがないと、求め続けてしまう。そもそも問題などあるのだろうか。
杉並、世田谷などで学校をオープンにすると、「経済的成功」をモデルにした人たちがプライドをもって、なだれ込む。「こうすべきだ」という意見をもって。新しい考え方が生まれつつあることも知らずに。
自分としての「豊かさ」とは何か、知っていくことが大事。そのためにも、こういったお互いの価値観に触れるような「対話の場」がなければ、「違い」とか「豊かさ」を考えることもできない。
対話の大切さ、自分の考えを探し、相手の考えも探す。よい対話をしていると、「自分はどうなんだろう?」と思って聴いている。
すごく良いポイント。自分の心の動きに目を向けることが、何より大事。
つまり、「対話の場」は問題解決のためではなく、「違い」や「自分にとっての豊かさ」を考え、コンセンサスを作っていくために必要なのである。
社会問題と向き合う姿勢が問われているのか?
人には、自己承認欲求がある。もっと社会はよくなると信じて頑張っているのか、よくならないと思いつつもポーズで頑張っているのか。
他人の話をどれだけ真摯に聴けるか。それがコミュニティのレベル。先ほどの3つのベースができると、人の話を聴けるようになる。
ガシガシがんばる人も美しい、人の話を聴く人も美しい。色々な人がそれぞれ、そういう自分を本当に好きならばいい。
やりたくない人に、どうやってもらうか?と考えることは、とても虚しい。
人間社会は、崩壊に向かっているのではないか?
ロジスティクス曲線という、生物の個体数の増加などを記述する微分方程式の解として得られる曲線がある。これは、あらゆる生物の増加がこの曲線に乗っていて、ある限界値に達した時に、そのまま一定数をキープするものは種を保存し、キープできない種はそこから減少のカーブを描き始める、という理論。人間は今、この限界値に達した瞬間を迎えているのではないか。ここで、減少のカーブを描き始めるのか、一定レベルをキープするやり方を見つけるのかが、問われている。
Webサービス市場を調査していると、以前までは顧客の学習に伴う購買レベルの向上に連続性があった(いつかはクラウンのように)。しかし今は、非連続で、モザイク化している。それに対して、企業は未だに連続性モデルで考え、動いている。そこにギャップが生じ、息苦しくなっているのではないか。
種の進化は、今でも起きているのではないか。人間一人ひとりの進化は止まってしまったとしても、人類全体で見ると、関係性のレベルで進化可能だと思う。そういった意味で、「つなぎ直し」として、対話があるのではないか。
つまり、対話による関係性のつなぎ直しこそ、人類の次のステップへの進化への希望なのではないか。
私たちはどこへ向かっていくのだろうか?
対話が求められているのは、寂しいからではないか。感じたことを「きちんと言葉にしないといけない」という切迫感からのがれ、もっと素直に自分のことを言えたら、と思う。魂のふれあい、心のふれあいを感じることが大切。
地球の中の一員として、「何をしたくて、何ができるか?」を対話の中で感じられることが大事。個人の変革が求められている。それを集団として、組織として、どう作っていくのか?向かっていくのか?それを考えたい。
学生はどうしても、正解を探してしまう。就職活動などは、マニュアル化され、都市伝説のような情報に振り回される。正しいことを言わないといけない、と思いこむ。しかし、その活動を通して、正解などないことに気づく。色々な生き方がある、自分らしくでいいんだ。他者も自分も受容する、という体験が必要。
つまり、社会問題を考えるということは、結局自分自身を考えることである。
まとめてみると
今日の対話を通じて、強く感じたこと。それは、「社会問題は解決しなければならない」と思いこむのではなく、「問題を問題ではなくしてしまうこと」ができるのだということ。「対話の場」は、そのための強力なプラットフォームである、ということ。
「心身の健康、ベースの豊かさ、社会性のバランスがとれると、解決しようとする人や勢力が自然に現れる」という考えに、大きく影響を受けた。社会問題は人の数より多く存在して、それぞれの問題は人それぞれの立場によって異なるのだから、全部の問題に解決策を用意してしまうと、もう忙しくて仕方がなくなる。施策がどんどん足し算のように増えていって、結局アクションプランを作っただけで終わってしまう。
「対話の大切さ」は、相手の価値観に触れることで、「自分自身の心の動きに目を向けること」。対話を続けることで、「自分の中で問題が消えていく」、という引き算が行われていく。こうしていくことが唯一、「解くべき課題を減らしていく手段」なのではないか。
解決しようとして新たな課題を増やし続けて疲弊しているのが、現代の企業組織。問題の根源は、「課題を増やして解決することが、いい仕事をしたことになる」という組織の論理だろう。大きな課題は、「課題を課題ではなくしてしまって、何もしなかった」というような本当に偉い人が、組織の中で評価されない、ということだ。
対話の場という「課題の引き算」のプラットフォームを育てていくために、私たちはどんなコンセンサスを作っていけばよいのだろうか。
参加いただいた20名の有志の皆さんに、心から感謝を述べたい。そして次回への引き続きの参加を願っている。
次回(11月2日)も、課題解決アクションを増やしていくのではなく、些末な社会問題が消えていって、本質に近づいていけるような、引き算の対話ができると嬉しい。
野村@GLOCOM
twitterでのフォローは、次のいずれかで。
@nomutaka
#s_Japan
研究会への参加希望は、nomura@glocom.ac.jpまで



