研究成果

2008年度 プラカデミア・サロン for Social Innovation 第4回 「人財と社会イノベーション(1)"ソーシャル・イントラプレナー"」

2009年5月28日

【第4回】 2008年8月19日
テーマ:人財と社会イノベーション(1)"ソーシャル・イントラプレナー"
進行:服部篤子研究員

■論文紹介
SustainAbility, (2008), The social Intrapreneur; A field guide for corporate changemakers
「ソーシャル・イントラプレナー:企業を変える人々」

 本論文は、トリプルボトムラインを提唱したジョン・エルキントンが代表を務めるサスティナビリティ社がまとめたもので、ソーシャル・イントラプレナーの企業内での役割、また彼らと社会起業家との協働の将来性を調査したものである。本論文の問題意識は、ノーベル平和賞を始めとする多くの表彰を受けている社会起業家たちが世界を救うのであろうか、いや、持続的な変革の最も偉大な仕掛け人は、一般に大企業に勤める理性的な人々であり、より優れた商品、新市場開拓を考え、その実現のためのリソースを持つ人々でああろう、という点にある。よって、ソーシャル・イントラプレナーに着目した点は、本サロンの当初からの問題意識と一致する。

 ソーシャル・イントラプレナーとは、
 1、 一流企業や大規模団体で働き、社会的環境的な問題に対して実践的な解決策を発展推進する人。
 2、 社会起業家の原理を、大規模な組織の中で適用する人。
 3、 内部と外部双方の発想と手法をもつ人。
 つまり、起業家の持つ技術と手法を備え、組織の資源を活用し、新しい事業モデルを構築する点など特徴がある。社内及び、社会において新しい価値を創造する人である。
 さらに、以下の特徴をとらえている。
 ・伝統的な古い考え方から脱却し、金銭的な動機からではなく、本当の改革を起こしたい願望に動かされる人々。
 ・社会起業家と多くの共通点を持っているが、事業を行なうにあたって必要な要件、実践過程直結していること、チームワークの価値、他の人々の取り込みや組織を通じて新しい概念を普及、拡張させることの必要性を認識している。

 本論文に複数の事例を提示しているが、企業に多くいる人材ではない点で、いかに発掘させるか、が課題。また、小規模なスタートであっても実施による成功を得、可能性をアピールすること、中間管理職の支持、イントラプレナーの取り組む価値を企業全体に認識を広めるなど成功のかぎをまとめている。

■ゲストとの対話
島根太郎氏(キッズベースキャンプ代表)
  ソーシャル・イントレプレナーとして実践している島根さんをゲストにお迎えした。キッズベースキャンプ(以下KBC)は、事業をインキュベートする「起業専業企業」をうたう株式会社エムアウトの新規事業としてスタートした。学童保育事業であるが、これまで社会問題になりつつも、行政の施策としては整備が進んでいた。そこに着目して子どもの成長を実感できるプログラムの導入に取り組んだ。最終的目指す事業は、人間教育であり、ビジョンに、「未来社会の各分野を支えるユニークな人材を輩出する」とした。
 学童保育を民間企業が複数店舗展開する先例はなく、自らのアイデアを親会社、株主であるエムアウトにどう理解してもらい経営を続けるか、という困難に直面したものの、結果(売上)を見せることで克服していった事例である。
 KBCは、より、事業が成長できる株主に変わる必要性を感じていた。こちらに強みをもちスケールする意向を語っていた。ただし、実力以上のIPOや創業者利益を第一に考えていない。それでは人がついてこない。理念が人を結びつけるのである。
(注2:新年より東京電鉄を親会社として関係が成立。経営陣とミッションを変えずに更なる事業展開を可能にする。)

(服部篤子研究員)