【第5回】 2008年9月12日
テーマ:人財と社会イノベーション(2)
進行:服部篤子研究員
■論文紹介
Bill George, Diana Mayer, and Andrew McLEAN, (2007), Wendy Kopp and Teach for America, Harvard Business School Case Study
ティーチ・フォー・アメリカ(以下TFA)とは、米国最大の社会問題である教育に着目し、なかでも、貧困コミュニテイの公立学校の荒廃を緊急課題として取り組み、そこに、名門大学の卒業生を2年間派遣し、子ども達によい教育を受けさせるプログラム。現在、低所得者への教育を提供する全米最大規模の団体。また、NPOにもかかわらず、2007年の米国大学生就職先人気ランキングトップ10入りを果たした。
論文では、1990年、TFAを創設したウエンディ・コップが1995年に予算が不足し、専門家からミッションや活動成果について批判を浴びた時期を分析している。初期の創設段階から拡大していく過程に焦点をおき、社会起業家精神、リーダーシップの成長や継続性について論じている。特に、毎年、名門大学の新卒者500人の若者を貧困コミュニティの公立小中学校の先生として送り込んだが、自分たちの実力以上に規模の拡大を急いだため、人材不足、資金不足に陥った点を指摘している。
2008年現在、6200人のTFA教師が全国29都市の約1,000の学校で、43万人の生徒に教えている、事業規模は、1億1,950万ドル、というデータがある。TFAの卒業生は、2年間の経験により、長期間教育の分野で働くほか、貧困コミュニティに関連した仕事に進路を変更する、政府セクターの職員や政策アドバイザーになるなど、教育改革、社会改革のためのユニークな人材、リーダーの供給源となっている。
■ゲストとの対話
片山信彦氏(NPO法人ワールド・ビジョン・ジャパン常務理事、事務局長)
ワールド・ビジョン・ジャパン(以下WVJ)は、日本でユニセフに次ぐ最大規模のNGOである。貧困の子ども達を支援する活動を世界的に行なっている。社会の根幹となる課題解決に取り組む人材を模索するため、TFAとWVJの事例を取り上げた。特に、WVJでは、そのマネジメント手法を学び、社会変革に必要な人材育成を模索することを目的とした。
WVは、1950年設立され、世界100ヶ所弱で活動している。ミッションの1つに、変革をもたらす開発とある。WVJのコミュニティ支援は、1つのプロジェクトが始まって終わるまで15年かかる。コミュニティとの関係構築に数年かかる、その後、第2期に、具体的に学校を作り制服を配る。第3期に、リーダーを育て、援助がなくとも持続できるようにする、ためである。
一方、スタッフの人材育成では、求人に対して何倍もの応募があるが、即戦力を必要とする。4つの能力開発に取り組んでいる。一緒に働く力、物事を進めていく力、自己管理と成長の力、知識と考える力、である。
また、3年計画を設立する際、ワークショップを開いて将来、誰を顧客として、どう運営するのかを全スタッフが参加し、話し合って、半年かけて作成した。専門性を深める部署と適性を見ながら異動できる部署があるが、異動は少ない。これでいいのかどうか、今回、組織と人事政策を見直す専門チームが発足した。根本的に人事のあり方を見直す予定である。
(服部篤子研究員)



