【第6回】 2008年10月16日
テーマ:再投資と新たなつながり(2)
進行:服部篤子研究員
■論文紹介
C.Clark,(2004), Double Bottom Line Project Report: Assessing social impact in double bottom line ventures. Method Catalog. Business School of the Columbia University
「ダブルボトムライン・ベンチャーの社会的インパクト評価手法カタログ」
ダブルボトムラインとは、通常財務評価をするボトムラインだけではなく、社会性と事業性の両方を評価するという意図から用いる。コロンビア大学ビジネススクールやカリフォルニア大学バークレー校ビジネススクールなどが、ロックフェラー財団の助成を受けて、社会的企業の事業評価の手法について調査した報告書である。社会事業を財務面だけで評価しても、社会的企業の本質をみることができず、むしろ、存在意義である社会的価値をどう測定するか、が本分野の長年の課題となっている。本論文は、様々な団体が開発した評価手法を網羅し、比較分析した点で貢献したものである。しかし、一長一短があり、標準化できるものではない。
変化の理論(Theories of Change)、バランススコアカード(Balanced scorecard)、アキュメンファンド・スコアカード(Acumen Fund Scorecard)、社会的リターン評価(Social Return Assessment)、投資家のためのコンパス評価(AtKisson Compass Assessment for Investors)、社会的インパクトの継続評価(Ongoing Assessment of Social Impact: OASIS)、投資に対する社会的リターン(Social Return on Investment: SROI)、便益費用分析(Benefit- Cost Analysis)、貧困と社会インパクト分析(Poverty and social impact analysis: PSIA)を掲載している。
また、成果分析をするうえで、アウトプット、アウトカム、インパクトにわけて定義づけた。特に、インパクトをどう評価するかが今後の課題である。「投入」をもとに「活動」を実施することにより、直接的結果として「アウトプット」が発生する。そのアウトプットが社会システムを動かすような「アウトカム」をもたらす。その中で、「発生するであろうと予期した成果」を取り除いたもの、つまり、「予期しなかった成果」をインパクトとよぶ。
■ゲストとの対話
田中淳夫氏(NPO法人銀座ミツバチプロジェクト副理事長、株式会社紙パルプ会館常務取締役)
銀座のまちは、歴史がある一方、海外ブランドのビルが立ち並ぶ。田中さんは、銀座のまちは職人のまちだと言う。「銀座のまちは、懐が深い。新しいものを受けとめる。しかし、いいものしか残らない。それが銀座のフィルターである。」、歴史については、「皆、明日のことばかりみて、歴史を振り返る余裕がない。残すべきところは残さなければ。」という発言をする。
田中さんは、銀座のまちづくりを目的に最初からNPO法人を設立したわけではない。養蜂家との出会いが契機となり、それをオポチュニティとしてまちを変化させた立役者である。みつばちとは、環境指標動物であり、ミツバチを飼うことで社会的「インパクト」が生じた事例、また、まちの人々を巻き込むアイデアと交渉力をもって、「インパクト」をさらに高めた事例である。
経済的な評価だけでは社会の変化をみることができない、むしろ、社会的な価値をどのように表現し、評価すべきかを考えることを目的として講演いただいた。
(服部篤子研究員)



